天木直人の公式ブログ

【バックナンバー】2005-04-26

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保阪正康氏と山崎正和氏の投稿記事
人の書いたものを読む時に着目する事が一つある。その記事が取材に基づいて実証的に書かれたものか、筆者の意見のみで書かれた作文に過ぎないものかという点である。    
この観点から、極めて対照的な二つの記事を25日の新聞で見つけた。その一つが25日朝日新聞夕刊に掲載されていたノンフィクション作家保阪正康氏の「反日に揺れる中国を訪ねて」という記事である。
彼は昭和史の実証的研究を続けている作家で、そのテーマの一つとして、「日本はなぜ中国政策を誤ったのか」、「なぜ日本軍は中国で残虐行為を働いたのか」を書くために、10年近く毎年中国を訪れ、中国の日本研究者、ジャーナリスト、実業家、政府関係者などとの交流を続けているという。今年も4月の15、16,17日の3日間北京に滞在した。その際に様々な中国人から聞いたという次の言葉は間違いなく今の中国人の思いを伝えていると思う。
「史実を無視して、どうして反省を曖昧にして国連の常任理事国になろうとするのですか。私には納得できない」
「小泉さんは私たちの政府をどうして困らせるのですか」
「中国侵略を口では認めても、靖国参拝を繰り返すという言行不一致では中国国民を納得させることは不可能だ・・・」
「(『中国側にとっても反日デモは益するところがない』という日本企業側の言を耳にした中国人実業家の言葉として)日本が歴史を自省しないで、経済、経済というなら、経済関係などゼロにしても、日本に復讐するという若い世代の声があることも忘れてもらっては困る」
これらは無知な中国人の言葉ではない。日本に滞在経験のある研究者や実業家の言葉である。
さらにまた保阪氏は、毎年訪れる北京で今年はとくに怒りの感情が強いと感じたという。
そして保阪氏は次の通り自らの結論を述べている。
「・・・北京で私が会った中国側の研究者や実業家たちは、一連のデモは政府がコントロールしている節はあるが、現実にはその枠を超えて国民的な広がりを持っていると見ていた。私は彼らと対話を試みるたびに、日本側の無神経な言動でたちまち火がつく「抗日・反日」のエネルギーが常に胎動していることを感じた。そのことを私たちは理解しておくべきである・・・日本の指導者は『反日教育をやめよ』などといった筋違いの発言をしているが、これは中国に対して『近代史を教えるな』と同義語である・・・中国社会では日本軍がいかに非道なことを行ったか、祖父の代から孫の代へと着実に語り継がれている。中国では30代、40代の研究者が、実証的な手法で今、聞き書きや日本軍閥の再調査を行っている。いまだ知られていない史実は、強制連行や毒ガス作戦を始めとして今後次々と出てくるのではないか。こうした史実は、大半が日本側が直視してこなかった。日本はますます謙虚に史実に向かいあわなければならない時代が来るだろう・・・『史実』を忘却しようとする私たちの国は、『史実』によって復習されるのではないだろうか・・・」
この保阪氏の言葉は彼が自ら取材し、また見聞してきた事実の基づいた意見であるが故に、説得力がある。
これに比べもう一つの記事はあまりにも軽薄な記事だ。25日読売新聞、「地球を読む」に掲載された、「イラク戦争は終わった」という劇作家・山崎正和氏の論評である。氏は次のように述べている。
「・・・ブッシュ大統領は、今こそようやく勝利宣言の資格を得たように見える。民主的選挙で選ばれたイラクの国民議会が新しい大統領と首相を任命したのである。振り返ればアメリカが国連決議を背景に開戦した時、戦争の目的は4つあった。独裁者サダム・フセインの排除、大量破壊兵器の疑惑の解明、イラクの民主化、テロリストの温床の制圧である。2年間の戦闘と占領の後に、4つの目標はほぼ十分に達成されたと見ることが出来る・・・
今後、新政権のもとでのイラクがどうなるか、憲法起草と経済再建が可能かどうか、とくに治安問題の早急な解決ができるかどうかわからない。しかしそれはもはや新生イラク人の問題であって、アメリカの問題ではない。おそらくアメリカ軍は、中東全域の安定を目指して、しばらく駐留をつづけるであろう。しかしそれはもはやこれまでのイラク戦争の延長ではなく、新しい動機と目的に基づいた、まったく別の武力行動なのである・・・最初から一貫してアメリカのイラク戦争を支持してきた私にとっては、今や『戦争は終わった』のである」
なんという暴論であろうか。暴論であるばかりでなく現実を無視した誤った論説だ。同じ日の新聞に、武装勢力の爆弾テロによりイラク人30名が死傷したというニュースが流されていた。イラク新政府の組閣は難航し未だに完了できないという記事があった。イラク各地で米兵が攻撃を繰り返し、3人の戦死者を出したという報道がなされている。「イラク戦争は終わった」どころか、アメリカはあの誤ったイラク攻撃の咎めを、これからまさに受けようとしているのである。米国にとって「本当のイラク戦争」がこれから始まろうとしているのである。
山崎氏は何を根拠に「イラク戦争は終わった」と断じているのか。間違った「イラク戦争」を支持した自らの不明から一刻も早く逃れたい、その一念で、イラク戦争を「終わりにしたい」だけなのではないか。
劇作家が国際政治を論評するからこういうことになるのだ。こういう論説を一面に堂々と掲載する読売新聞は読者を軽視しているとしか思えない。
5年目に入る小泉政権
 今日4月26日で小泉政権発足後丸4年がたったという。明日から5年目に入るのだ。
本来ならば特集記事が各紙をにぎわすところである。たしかにいくつかの新聞は特集記事を組んでいた。しかし大した記事は見当たらなかった。
尼崎市で起きた不幸な列車大事故で紙面埋め尽くされたこともあろう。郵政民営化法案をめぐる自民党の混乱に報道の関心が向けられたこともある。しかしそれだけではない。書くべき内容がないのだ。4年間も続いた小泉政権に見るべき成果がないのだ。まさか「八方ふさがりの外交」、「史上最悪の財政赤字」などという否定的なことばかりを書くわけにはいかないだろう。
小泉政治の功績をたたえる時に決まって持ち出されるのが二つある。その一つが金融システムを蝕んできた不良債権を半減させたことである。しかしその数字の達成の為に、どれだけの税金が投入されたか。どれだけの貸し渋り、貸し剥がしが中小企業をいじめてきたか。経済の疲弊ばかりをもたらした不良債権処理とは何だったのか。そもそも不良債権の処理といっても、名前も覚えられないほど頻繁に繰り返された銀行の合併劇に過ぎないのではないか。
もう一つ喧伝されるのは日米関係の良好さである。たとえば26日の朝日新聞でコロンビア大学教授のジェラルド・カーティス氏は、「小泉政権になってから、アメリカとの関係がより良好になったのは確かだ。9.11テロの後の対応とブッシュ大統領との個人的な信頼関係が出来た事は評価すべきだ」と書いている。
本当だろうか。我々はこの種の表現をこれまで嫌というほど聞かされてきた。しかしその言葉の中身を考えたことがあるのか。検証したことがあるのか。考えても見るがよい。通訳を通じてしか会話が出来ず、首脳会談や電話会談という最も形式的な接触しかしてこなかった小泉首相とブッシュ大統領に、どうして個人的な信頼関係が築けるというのか。
事実、4年間の日米外交関係のバランスシートを検証した時、日本が得たものは何もないはずだ。小泉首相は外交、経済両面で、日本国民のあらゆる犠牲を払って米国を助けてきた。それに比べて米国が日本に与えてくれたものが何かあるのか。安全保障だって?とんでもない。戦後いまだかってこれほど安全保障の脅威が強調された時期はなかったではないか。近隣諸国との関係がこれほど悪化した時期があったか。
そもそも悪い日米関係とは何か。あらゆる面で米国に従う日本と米国の関係が悪くなるとすれば、唯一つ、米国が無理な注文を日本に押し付けて日本を困らせる時だ。小泉首相はすべて丸のみだから関係が悪くなるはずはない。
考えれば考えるほど実績のない小泉政権である。特集記事に精彩がないのもうなずける。
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