天木直人の公式ブログ

米国とイスラエル

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豊下楢彦という国際政治学者
  書評のついでにもう一つ書いておく。豊下楢彦という国際政治学者がいる。私が彼を知ったのは「安保条約の成立」―吉田外交と天皇外交(岩波新書)ーを読んだ事がきっかけであった。
  その著書により、昭和天皇が、新憲法の下で政治的行為を行わない象徴天皇になってからも、単独でマッカーサーと何度も会見し、自らの保身の為に吉田茂に安保条約の早期締結を迫った事を知った。
  もっとも、前段は周知の事実であるが、後段は豊下の推論である。昭和天皇とマッカーサーの会談の真相は未だそのすべてが公開されていない。おそらく今後も公開されることはないであろう。だから豊下の推論はあくまでも推論にとどまって終る。しかし彼の推論は少なくともその著を読む限り説得力はある。そしてその推論が正しければ、われわれの戦後外交のイメージは一変する。
  豊下教授の国際政治学者としての一般的評価を私は知らない。しかしこのような意見を著書で明らかにする学者は、その実力や業績の如何にかかわらず、既成体制にとって容認できないということであろう。御用学者のようにメディアやマスコミなどで重用される事は決してありえない。
  その豊下が、同じ岩波新書から、「集団的自衛権とは何か」という最新著を先月上梓した。さっそく購入して読了した。教えられる本だ。タイムリーな本だ。
  その中で私が注目したのは、何と言っても、1960年の安保改定に先駆けて行われた重光葵外相とダレス国務長官とのやり取りの中の次のごとき米国の本音である。
・・・(1955年に行われた重光葵の訪米の目的は)日本には(全土にわたって)基地を提供する義務はあるが米国には日本を防衛する義務はない、という不公平極まりない旧安保条約の改定を要請することであった。
  このため重光は安保条約にかわる相互防衛条約案を携えて臨んだ。しかしダレスは重光の提案を門前払いする。(その表向きの理由は)安保改定を受け入れる大前提として、日本がまず憲法改正を行い、集団的自衛権の行使を可能にすること(であったが、実は重光案の中には米国として受け入れがたい項目があったのだ)。すなわち、「日本国内に配備されたアメリカ合衆国軍隊はこの条約の効力発生とともに撤退を開始するものとする」という項目があったのだ。
  ダレスはこれに激しく反発した・・・ダレスにとっては、日本が集団的自衛権を行使して「米国を守る」ことよりも、米国が日本の基地を特権的に維持し続けることの方がはるかに重要な意味を持っていた・・・ダレスの最大の獲得目標は、「望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間だけ駐留させる権利」の獲得にあった・・・
(米国にとっては)日本を独立させた以降も占領期の米軍の特権維持を保障するような条約を締結することこそが、死活的な意味を持っていたのである・・・
  一般国民は、岸信介の手による日米安保条約の改定が、それまでの片務的なものから対等なものに改められたと信じ込まされている。それが岸信介の一大功績であると思い込まされている。しかし実際は安保条約の改定によって米国の一方的な基地占有が固定化されたのだ。
 ついでに言えば、豊下が指摘するもう一つの重要点も見逃せない。それはいわゆる極東条項の起源についてである。
  極東条項とは、極東における共産主義の脅威から米軍が日本を守ると言う意味で、米軍の軍事行動を地域的に限定する条項であると解されている。だからこそ極東を超えたベトナムや中東地域での米国の戦争に日本から米軍が出兵することが、安保条約の逸脱であると批判される。
  ところが安保条約の交渉の経緯を検証すると、極東条項は米国の要求によって書き込まれた米軍のフリーハンド条項であるのだ、と豊下は言う。
  旧安保条約は、言うまでもなく、国連による集団安全保障(特定国との軍事同盟によって安全保障を図るという集団的自衛権の発動ではなく、国連加盟国全体によって潜在的な敵に対応し安全保障を図る事)が発動されるまでの過渡的な二国間条約にしたいとする日本側の考えと、自らの安全保障政策のために在日駐留軍を自由に使いたいとする米国の間のせめぎあいの結果、日本が全面的に譲歩して出来たものだった。
  言い換えれば、米軍の軍事行動を、国連憲章に縛られる事なく、米国独自の判断で一方的に行えるよう米国が要求してきた条項であった。そして、そのような米国の要求を受け入れざるを得なかった事を「汗顔のいたり」と考えた外務官僚が、その「悔恨」を背景に、岸政権下の安保条約改定交渉において削除を申し入れたところ、再び拒否されたといういわくつきの条項であった。
  豊下は次のように解説する。
「日米安保条約が国連憲章の目的と原則を再確認しその遵守を謳っている以上、米軍の行動には憲章51条の規定に従い『武力攻撃の発生』という縛りをかけることが必要不可欠であった。ところが譲歩の結果この縛りを欠くことになったため、またしても国連憲章を無視した米国の「一方的行動」を想定した条約となってしまった・・」
  賢明な読者は、私が豊下の著書の書評を借りて何が言いたいか、もうおわかりだろう。日米安保体制というものは、そもそもそれが成立した時点から改定される時に至るまで、一貫して日米の立場の違いのせめぎあいであり、そして最後は日本側が米国の要求に譲歩する、その産物であったということだ。
  そして私が強調したい事は次の一点である。それから半世紀がたって、今米国は米軍再編と言う名の全く新しい日米軍事関係を求めるようになった。その新しい同盟関係のためには、本来ならばあらたな条約交渉が必要である。ところが、いつしか日米関係は、米国はもはや日本側との交渉すら必要としていないほど支配的になり、その日本は交渉する気迫をとうに失い、いかにして国民を欺いて米国の要求を丸呑みするかに腐心する情けない国になってしまった。その二つの国の不均等な関係こそ今の日米同盟関係なのだ。
  そんな日本政府にとって、真実を指摘する豊下の新著は、百害あって一利なしということであろう。
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米国とイスラエル

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米国とイスラエル
  久しぶりに一気に通読した。たまたま本屋で見かけて購入したジェームズ・ペトラスの手による「アメリカのイスラエルパワー」(高尾菜つこ 訳、三交社)という本である。米国とイスラエルの関係を教えてくれる文献はあまたある。しかし「アメリカの中東戦略のすべては、イスラエルの植民地拡大と覇権のために決定されている」と言い切るペトラス教授のこの本は、私が眼にしたどのシオニスト批判の書よりも本質に迫っている。
  ペトラスは言う。米国がイラク戦争を始めたのは決して石油の為ではない。イスラエルの安全保障のためだと。
  ペトラスは言う。米国は共和党(右)と民主党(左)とを問わず、すべての政治家はイスラエルの国益と一体であると。
  ペトラスは言う。シオニストに不利な情報は一切押さえ込まれ、有利な情報だけが誇張して報じられると。
  ペトラスは言う。米国の外交政策を声高に非難するチョムスキーでさえも、ユダヤロビーの影響については認めようとしないと。
  ペトラスは言う。ユダヤロビーの影響力によって、やがて世界は、イスラエルの残虐行為に対する抗議や、ユダヤロビーに対する一切の批判を、「憎悪犯罪」として処罰するようになるだろうと。
  ペトラスは言う。シオニストの完全な影響下にある米国の中東政策は、スパイ、拷問、暗殺、大量殺戮と、行き着くところまで行きつつあると。
  ペトラスは言う。イスラエルはパレスチナとの平和などまったく念頭にない。あるのはパレスチナ人のアパルトヘイト化(人権を剥奪した上での隔離)であると。
  ペトラスは言う。中東でのあらゆる戦争は、すべてイスラエルによって、年月をかけて、周到に計画されているものであると。
  ペトラスは言う。米国大統領や英国首相をはじめとする人道犯罪を犯した指導者に正義が行われない限り、平和と和解は実現されないと。
  そしてペトラスは最後にこう結ぶのである。
  「・・・我々には世界中に多くの同盟者がいる。米国民の懸念が深まっている今、我々の思想や疑問は共感を呼ぶはずだ。その第一歩を踏み出して、我々の国や政治、そして心を、植民地から解放しよう。そして植民地主義や新帝国主義のしがらみのない、民主的な共和国を再建しようではないか!」と。
 私はペトラス以上にシオニストに批判的だ。私はペトラスの最後の言葉ほど楽観的になれない。それでもこれだけは断言できる。日米軍事同盟重視を叫ぶ日本の政治家は、イスラエルと言う国を直視しなくてはならない。イスラエルと米国の結びつきを忘れてはならない。これが外交官生活の最後にレバノンに勤務した私がたどり着いた結論である。
 そして今日(8月31日)もまた、日常茶飯事のように、次のような記事が外報面に小さく報じられている。
 「・・・パレスチナ自治区ガザで29日、子供三人がイスラエル軍の攻撃により死亡した。イスラエル軍からの砲撃の破片で死亡したと見られている。イスラエル軍報道官は過激派が子供たちをロケット弾発砲装置などの回収に使っていると非難した・・・」
  
  
 
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