天木直人の公式ブログ

沖縄集団自決検定をめぐる騒動が示したもの

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沖縄集団自決検定をめぐる騒動が示したもの
 26日、沖縄集団自決検定問題に関する検定調査審議会の最終報告が政府に提出された。それを渡海文部科学相が承認し国民に発表した。これにて決着した一大騒動の顛末を解説するのが今日のブログである。
 今年3月、(沖縄の集団自決は)「日本軍が強制した」という教科書の記述が今年の検定で削除された事が判明した。それを知った沖縄県の政府、住民がこぞって猛反発した。その反発は日が経つにつれ大きくなり、9月29日の11万人(主催者発表)大集会でピークに達した。その勢いに押される形で教科書会社が相次いで訂正を申請し、政府は教科書検定調査審議会に再審査を命ぜざるを得なくなった。
 それから約2ヶ月後、教科書検定調査審議会の日本史小委員会は、申請を再審議し、少なくとも「軍の関与はあった」とする教科書の記述を認める見解を報告書の中で明らかにした。これが経緯のあらましである。  
  この顛末が教えてくれた中で、私は特に次の二つの点に注目したい。いずれもこよなく今日的な問題である。
  まず第一点として、国民(沖縄県民)の声に圧倒されて政府が政治決断を迫られたという事である。この事は薬害訴訟における政治決断と極めて酷似している。その政治決断は100%沖縄県民の要求を満たしたものではない(この点でも薬害訴訟と酷似している)。すなわち「軍の強制」を明確な形で認めたものではない(被害者の一律救済は認めたものの国の責任を認める点についてはなお不明である)。それにもかかわらず、少なくとも軍の関与があった事は否定できないとした。この事実は重い。これまでには考えられなかった事だ。政府の決定が国民(住民)の声に押されて覆された。薬害訴訟の場合と同様に、これまでには考えられなかった新しい動きである。
  二つ目は、今回の騒動も、やはり官僚の仕事のいい加減さが招いた騒動であったということだ。年金問題や薬害被害が、社会保険庁や厚生省の官僚のずさんな仕事や不作為の罪でもたらされた事は既に明らかにされている。そしてこの沖縄集団自決検定騒動も、文部科学省の官僚の軽率な行為によって引き起こされたのだ。
  かつて私は琉球新法の取材に対して次のように答えた事があった。すなわち、この検定は、戦後レジームを見直そうとする安倍首相などの政治主導でなされたものではなく、文部科学省官僚の軽率な判断だったに違いないと指摘した(9月23日琉球新法、直言「集団自決」検定⑦)。その私の指摘を裏付けるように、12月27日の朝日新聞は次のように書いている。「多少の反発はあるだろうと思っていたがそんなに反対される問題じゃないと思っていた」(作業に携わった職員)、「これほど大問題になるとは思っていなかった」(当事者)。この程度の認識で沖縄県民の心を踏みにじる検定作業をしていたということである。
  最後に2点付け加えておきたい。承認された教科書の中には、「2007年の教科書検定の結果、沖縄戦の『集団自決』に日本軍の強制があった記述が消えたことが問題になった」と記述する教科書があったという(東京書籍『日本史A』)。吹き出しそうな教科書の記述であるが、実はこれこそが正しく、良心的な記述に違いない。この記述をきっかけに読み手が自分で史実を突き止め、判断するようになればいい。政府の押しつけの情報を鵜呑みにしない態度が養われることになる。
  もう一つは、今度の報告を発表する際、渡海文部科学相は、「政治的介入を行った事はない」と強調していた。一部大手新聞の社説も「政府は教科書検定に対する政治介入の愚を繰り返してはいけない」などと書いていた。言葉遣いが間違っている。政治介入とは政府の意向を押しつけることである。国民の反発に負けて方針を変更する事は、政治介入ではなく政治判断という。
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